ユーザビリティテストを行うメリットや実際のやり方を解説します。

ユーザビリティについて

ユーザビリティ(usability)というのは、直訳すると「使いやすさ」という意味です。サイト制作者であれば、一度は耳にしたことがあると思いますが、具体的にどういうものが使いやすいと判断されるのか、いまいちよくわからないという方もいると思います。

そこで、代表的な2つの定義を参考に、ユーザビリティつまりサイトの使いやすさとは何かを解説していきます。

ヤコブ・ニールセン博士の定義

Webユーザビリティの第一人者であるヤコブ・ニールセン博士は、下記の5つの要素がユーザビリティを構成すると述べています。

学習のしやすさ(Learnability)

ユーザーがすぐに使い始められるよう、学習しやすいものであること。

効率性(Efficiency)

一度操作を覚えれば、あとは高い生産性を上げられるよう、効率的に使用できるようなものであること。

記憶のしやすさ(Memorability)

しばらく使っていなくても、再び使うときにすぐに使い方が思い出せるようなものであること。

エラー(Errors)

エラーの発生率が低く、発生したとしても簡単に回復ができるようなものであること。また致命的なエラーが起こらないこと。

主観的満足度(Satisfaction)

ユーザーが満足し、楽しく利用できるようなものであること。

ISO(国際標準化機構)による定義

ISO(国際標準化機構)によるISO 9241-11規格では、「特定のユーザが特定の利用状況において,システム,製品又はサービスを利用する際に,効果,効率及び満足を伴って特定の目標を達成する度合い」(JIS Z 8521:2020より)と定義されています。

上記の文章で使われている用語は以下のように定義されています。

効果(effectiveness) ユーザが特定の目標を達成する際の正確性及び完全性。
効率(efficiency) 達成された結果に関連して費やした資源。
満足(satisfaction) システム,製品又はサービスの利用に起因するユーザのニーズ及び期待が満たされている程度に関するユーザの身体的,認知的及び感情的な受け止め方。
(JIS Z 8521:2020より)

2つの定義に共通しているのは、効率性や満足度です。ユーザー側に負担がかからないことはもちろん、使用したときに不快な感情が生まれず、むしろ楽しく利用できるものが、使いやすさにおいて重要であるということが2つの定義からわかると思います。

ユーザビリティテストとは

先ほど説明したユーザビリティを調査するのが、ユーザビリティテストです。

ユーザーに本物のUIや開発中のプロトタイプを試しに使用してもらい、課題を実行する過程を観察することで、問題点を明らかにします。

ユーザビリティテストでは、実際にユーザーが目の前で操作している様子を見ることができるので、サイトを制作する側では気づけなかった問題点だけでなく、何を知りたいと思っているのか、どんな不安を持っているのか、どこにニーズがあるのかといったユーザー視点(心理)もわかります。

ユーザビリティテストの実施方法

対面型

ユーザビリティテストは主に対面型で行われます。

実際にユーザーにWebサイトを使ってもらい、その様子を観察、そしてヒアリングを行います。本来のターゲットに近い被験者に協力してもらうことで、より信頼性の高いインプットが得られます。ただし、費用や時間がかかると言ったデメリットもあります。

リモート型

ユーザビリティテストは対面だけではなく、リモートで行うことも可能です。

リモートで行う場合は、ユーザーに自宅でWebサイトを使ってもらい、その様子を録画したり、使った感想を書いたりしてもらいます。録画する際は、思考発話法(操作中に思ったことを口に出してもらう方法)を実施してもらいます。

対面型に比べると、コストも時間もかからないというメリットがありますが、表情の確認や、発言への掘り下げがしにくいという面もあります。

簡易型

簡易型は、会社の同僚や家族など、身近な人を対象に行うので、事前準備もあまり必要なく、ローコストで手軽に行えるのがメリットと言えます。

ただし、想定しているターゲット層とは異なる場合が多いので、インプットの信頼度はあまり高くないというデメリットがあります。

ユーザビリティテストの方法と流れ

1.目的の設定

まずは、なぜユーザビリティテストを行うのかという目的を設定します。「サイトの使い勝手が良いかどうか検証する」といったざっくりとした目的ではなく、ユーザビリティテストで何を明らかにしたいのかを具体的に決めましょう。

たとえばECサイトの場合、ユーザーが欲しい商品を探して、スムーズに購入まで進めるかどうか検証するなどの目的を設定するのが良いでしょう。
目的をしっかり決めておくことで、テスト終了後にどこを改善しなければいけないのかがわかりやすくなります。

2.仮説の設定

目的が設定できたら、次はユーザーがどのような操作を行うかという仮説を立てていきます。

ユーザーはここでつまずくのではないか、ここの入力に時間がかかるのではないかなどの仮説を立てても、実際には想定していたこととまったく異なることもあります。

仮説を立ててユーザビリティテストに臨むことは、サイト制作者側のバイアス(思い込み)を明らかにすることにもつながるのです。

3.タスクの設計

先ほど立てた仮設を検証するために、ユーザーに実行してもらうためのタスクを設計します。タスクは、実際にユーザーが使用するシーンを想定して、具体的に設計しましょう。

4.質問事項の作成

タスクが決まったら、そのタスクに対しての質問事項を作成します。

質問事項を作成する際の注意点として、「はい/いいえ」で答えられるような質問は避けるようにしましょう。ユーザーに制約なく、自由に回答してもらうことで、より多くの情報を得ることができます。

ただし、あまりに選択肢が多いと、ユーザーに心理的負担をかけてしまうこともあるので、「いつ」「どこ」「どのように」などある程度答える範囲を限定してあげるのも大切です。

5.人・場所・ものの準備

ユーザビリティテストを実施するとなると、準備しなければいけないものがいろいろありますので、抜け漏れがないよう、チェックしながら準備を進めましょう。

実施方法によって準備するものは変わってきますが、対面型の場合は、協力してくれるスタッフ(インタビュアーやオブザーバーなど)、被験者となるユーザー、テスト会場、機材(PC・アイトラッカー(視線追跡装置)・カメラなど)といったものの準備が必要になってきます。

6.パイロットテスト

いきなり本番ではなく、本番に近い状態で事前にリハーサルを行います。

しっかり準備をしたつもりでも、実際の流れでテストを実施すると、意外に改善すべき点が出てきますので、スムーズに本番を迎えられるよう、パイロットテストは必ず行いましょう。

7.本番テスト

パイロットテストの結果をブラッシュアップし、準備が整ったら、いよいよ本番のユーザビリティテストを実施します。

テストというと、どうしても緊張してしまう被験者が多いので、できるだけリラックスした状態でテストに臨めるよう、配慮してあげてください。

8.結果の解釈・評価

テスト終了後、被験者から得られた結果を整理し、どこを改善すべきか、改善するためにはどうすればいいのか、改善点が複数ある場合には、何から着手するのかなどを検討していきます。

また、テストの評価に関しては、ユーザビリティについての部分で紹介したISOの定義を参考に「効果」「効率」「満足度」で評価します。

まとめ

ユーザビリティテストは、実施方法によっては手間・コスト・時間がかかってしまうわけですが、その分サイト制作者では気づけなかった課題を浮き彫りにすることができます。
また、ターゲットとしているユーザーの声を直に聴くことができるので、解析ツールを見るだけではわからなかったユーザーの視点(心理)を明らかにすることもできます。
アクセス解析を行った際に、なぜ数値が低いのかがわからないという場合は、ぜひユーザビリティテストを実施してみましょう。

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